手取りとは?額面との違いと、何が引かれているのか
しくみパパ
求人票に書いてある金額と、口座に振り込まれる金額は同じではありません。この差の正体を整理します。
- 額面と手取りは何が違うのか
- 給与から引かれている5つ(+1つ)の中身
- 税金と社会保険料は何が違うのか(引かれ方は同じでも性質が別)
- 額面30万円なら手取りはいくらになるのか(一般的な例)
- 住民税だけ仕組みが違う理由と、家計を手取りで組む理由
自営業・フリーランスは加入する保険が違うため、引かれるものも変わります。ここでは扱いません。
そもそも手取りとは?
手取りとは、実際に自分の口座に振り込まれる金額のことです。会社が支払った金額そのものではありません。
| 額面(総支給額) | 手取り(差引支給額) | |
|---|---|---|
| 意味 | 会社が払う金額の合計 | 口座に入る金額 |
| どこに書いてある | 求人票・給与明細の左側 | 給与明細のいちばん下 |
| 含むもの | 基本給+残業代+各種手当 | 額面から税金と保険料を引いたあと |
| 家計に使えるか | 使えない | 使える |
| 目安の割合 | 100% | おおよそ8割(額面が上がるほど下がる) |
しくみパパ
そこから税金と保険料を先に抜いてから振り込む仕組みを天引き(源泉徴収)と言います。自分で払う手続きはいりませんが、そのぶん引かれていることに気づきにくくなります。
つまり、求人票の「月給30万円」は、30万円が振り込まれるという意味ではありません。この前提を知らないまま家計を組むと、最初の給料日で計算が合わなくなります。
給与から引かれている5つ(+1つ)
引かれるものは、大きく分けて税金2つと社会保険料3つです。40歳になると、ここに1つ増えます。
| 名前 | ひとことで言うと | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 所得税 | 国に納める税金。稼いだ額に対してかかる | その月の給与額と扶養の人数 |
| 住民税 | 住んでいる自治体に納める税金 | 前の年の所得 |
| 健康保険 | 病院で3割負担で済むための保険料 | 4〜6月あたりの給与の平均 |
| 厚生年金 | 将来の年金と、障害・遺族の保障のための保険料 | 同上(全国一律の率) |
| 雇用保険 | 失業したときの給付や育休給付のための保険料 | その月の給与額 |
| 介護保険 (40歳から) | 介護が必要になったときのための保険料 | 健康保険と同じ基準 |
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つまり実際には、明細に書かれた倍の保険料が納められている計算です。
そのため、この時期に残業が多いと、その後1年間の保険料が高くなるという現象が起きます。
つまずきやすいところ:税金と社会保険料の違い
どちらも同じように引かれるので混ざりがちですが、性質はまったく違います。
| 税金(所得税・住民税) | 社会保険料(健康保険・年金・雇用保険) | |
|---|---|---|
| 納める先 | 国・自治体 | 保険の運営者 |
| 性質 | 負担。戻ってくる前提ではない | 保険料。使う場面が来たら給付がある |
| 払った見返り | 公共サービス全般 | 医療・年金・失業給付など自分に返る |
| 会社の負担 | なし | あり(半分ずつ) |
| 減らす方法 | 控除を使う(ふるさと納税・iDeCoなど) | 基本的に減らせない |
しくみパパ
収入から控除を引いた残りに税率がかかるので、控除が増えると税金が減ります。「税金が安くなる制度」の多くは、この控除を使う仕組みです。
雇用保険も、育児休業の給付を受けるときに効いてきます。使う場面が来たときにしか実感できないだけで、支払っている対価はあります。
実際にいくら引かれるのか(一般的な例)
ここからは一般的なモデルケースです。実際の金額は、住んでいる自治体・加入している健康保険・扶養している家族の人数・年齢によって変わります。
あくまで概算です。保険料率は年度や加入先で変わるため、同じ額面でも数千円の差が出ます。
| 項目 | 金額の目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 額面(総支給額) | 300,000円 | ここが出発点 |
| 健康保険 | 約15,000円 | 会社も同額を負担 |
| 厚生年金 | 約27,000円 | 引かれる額としては最大 |
| 雇用保険 | 約1,700円 | 比率としては小さい |
| 所得税 | 約5,500円 | 保険料を引いたあとの額で計算 |
| 住民税 | 約12,000円 | 前の年の所得で決まる |
| 引かれる合計 | 約61,000円 | 額面の約2割 |
| 手取り | 約239,000円 | 額面の8割弱 |
しくみパパ
しかも一番大きいのは税金ではなく厚生年金です。ここを勘違いしていると、節税の話ばかり調べても手取りはほとんど変わりません。
ざっくりした目安として、「額面の8割弱が手取り」と覚えておくと大きくは外れません。実際にはおおむね75〜85%の幅があり、収入が上がるほど税率の高い部分が増えるので、割合は少しずつ下がっていきます。額面が2倍になっても、手取りが2倍になるわけではないということです。
なお、ボーナスからも同じように税金と社会保険料は引かれます。「額面40万円のボーナス」がそのまま振り込まれることはありません。ここも毎月の給与と同じ考え方です。
住民税だけ、仕組みが違う
引かれるものの中で、住民税だけは「前の年の所得」で決まります。今年たくさん稼いでも、今年の住民税は上がりません。来年上がります。
| 場面 | 住民税は | 起きること |
|---|---|---|
| 新社会人の1年目 | 引かれない(前年の所得がないため) | 手取りが多く見える |
| 2年目の6月から | 引かれ始める | 昇給したのに手取りが減る |
| 収入が下がった翌年 | 前年の高い所得で計算される | 収入は減ったのに税額は高い |
| 退職して無職の期間 | 自分で納める(自治体から通知が届く) | まとまった請求が来て驚く |
同じ理由で、退職・転職・育休で収入が下がった年の翌年は、収入と税額がずれます。前年の所得をもとに請求が来るからです。
しくみパパ
家計の計画は、手取りで立てる
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
| 額面で計画を立てる | 手取りで計画を立てる | |
|---|---|---|
| 使える前提の金額 | 実際より多い | 実際どおり |
| 毎月の結果 | 組んだ額と実際がずれる | ずれない |
| 貯金の扱い | 「余ったら貯める」になりがち | 先に取り分けられる |
| 住宅ローンなどの試算 | 返せる前提で計算してしまう | 返せる額が正しく出る |
私自身の家計は、手取り36万円・ボーナスなしを前提に組んでいます。そのうち毎月15万円を夫婦共同の生活費として拠出しているので、残りで自分の固定費と積立をまかなう形です。額面の数字はどこにも使っていません。使う機会がないからです。
毎月の固定費は月々の手取りだけで成立させるのが安全です。ボーナスは「あったら前倒しで返済・貯蓄に回す」枠に置きます。
しくみパパ
目安の「8割弱」は、あくまで大まかな見当をつけるための数字です。
よくある質問
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 年収と手取りは違う? | 違います。年収は額面の1年分です。手取りの年間合計はそれより少なくなります |
| 残業した月は手取りが増える? | 増えますが、所得税と雇用保険もその月の額に応じて増えるので、増えた分がまるごと入るわけではありません |
| 4〜6月の残業は控えるべき? | 健康保険と厚生年金の保険料はこの時期の平均で決まります。ただし厚生年金は将来の受取額にも反映されるので、単純に損とは言い切れません |
| ふるさと納税で手取りは増える? | 手取りそのものは増えません。納める税金の一部を先に払って返礼品を受け取る仕組みです |
| 給与明細はどこを見ればいい? | 「総支給額」「控除合計」「差引支給額」の3か所です。差引支給額=手取りです |
| 転職したら手取りはどうなる? | 額面が同じでも、加入する健康保険が変わると保険料が変わります。住民税の引かれ方も一時的にずれます |
まとめ
- 額面=会社が払う額、手取り=口座に入る額。目安は額面の8割弱
- 引かれるのは税金2つ(所得税・住民税)と社会保険料3つ(健康保険・厚生年金・雇用保険)。40歳からは介護保険が加わる
- いちばん大きいのは税金ではなく厚生年金
- 住民税は前の年の所得で決まる。2年目の6月・退職後・収入が下がった翌年にずれる
- 家計の計画は手取りで立てる。額面で組むと、その差額(約2割)のぶんだけ毎月ずれる
しくみパパ
金額そのものは変えられなくても、前提を間違えないだけで家計の計算は合うようになります。
家計の話は、たいてい「いくら使ったか」から始まります。でも出発点の金額を間違えていたら、そのあとの計算は全部ずれます。まず手取りを正しく把握するところからだと思っています。