先取りの金額はどう決めるのか。無理のない額の出し方
しくみパパ
止まった理由はいくつか重なっていますが、その1つが1万円という数字に自分の実績が1円も入っていなかったことです。この記事ではそこを扱います。
- 先取りする金額は1種類ではない。「備え」と「貯金」を分けて考える
- 「手取りの2割」のような目安から入ると、なぜ崩れるのか
- 過去6か月の実績から先取り額を出す4つの手順
- ボーナスが無い家計の組み方と、金額を下げるという判断
先取りする金額は、1種類ではない
金額の話に入る前に、分けておかないといけないものがあります。「先取り」と呼んでいるものの中に、性質の違う2つが混ざっています。
しくみパパ
どちらも給料日に取り分けますが、減っていい前提かどうかがまったく違います。
つまずきやすいところ:「備え」と「貯金」は別物
同じ「先取り」でも、この2つを混ぜると金額を見誤ります。
| 備えの先取り | 貯金の先取り | |
|---|---|---|
| 正体 | 年払い・半年払いの支払いを月割りしたもの | 将来のために積み上げるお金 |
| 性質 | 支払い済みのお金を預けているだけ | 本当に増えていくお金 |
| いつ減るか | 請求が来た月に、予定どおり減る | 基本的に減らさない |
| 扱い | 固定費として扱う(家賃と同じ) | 資産として扱う |
| 決める順番 | 先に決める | 備えを引いた残りから決める |
| 私の額 | 毎月17,026円 | 現在0円(2026年11月から10,000円) |
備えのほうを先に確保しないと、年1回の請求が来た月に、貯金として取り分けた分を取り崩すことになります。そうなると、貯金しているつもりで年払いを払っていただけ、という状態になります。
よくある目安「手取りの2割」から入ると崩れる
金額の決め方として、よく紹介される目安があります。
| よく見る目安 | 手取り36万円だといくらか | 言われている理由 |
|---|---|---|
| 手取りの1割 | 36,000円 | 無理なく始められる最低ライン、とされる |
| 手取りの2割 | 72,000円 | いちばんよく見かける目安 |
| 手取りの3割 | 108,000円 | 独身・実家暮らし向けとされることが多い |
| 生活費の6か月分を先に作る | 目標額として設定 | 先に緊急時の備えを作る考え方 |
これらの目安が間違っているわけではありません。問題は使い方のほうです。
目安は「他人の平均」であって、自分の家計の実績ではありません。手取りが同じ36万円でも、共同の財布への拠出があるか、返済があるか、年払いがいくらあるかで、出せる額はまったく変わります。目安から出した金額には、自分の実績が1円も入っていません。
私の場合、返済だけで毎月91,830円あります。この状態で「手取りの2割だから72,000円」と決めていたら、1か月ももたなかったはずです。
先取り額を出す4つの手順
やることは4つです。カード明細と銀行の入出金があればできます。
- 過去6か月の収支を、月ごとに出す。平均ではなく、月ごとに1つずつ出します。このとき年払い・半年払いの支出は、各月の収支から抜いておきます(毎月ではない支出なので、③で月割りにして引き直すためです)
- いちばん厳しかった月を見つける。いちばん残らなかった月を1つ選びます
- 年払いの備えを先に確保する。毎月ではない支払いを12で割った額を、先に引きます
- 残った額を貯金の先取り額にする。厳しい月でも出せた額です
手順①:過去6か月の収支を、月ごとに出す
しくみパパ
プラスなら黒字、マイナスならその月は貯金を取り崩しているということになります。
1円単位で合わせる必要はありません。ここで欲しいのは正確な帳簿ではなく、どの月がいちばん厳しかったかという順番だけです。
年払い・半年払いを抜いておくのは、二重に引かないためです。年払いが来た月の収支には、その支払いがすでに入っています。抜かないまま③で月割りの備えをもう一度引くと、その月だけ同じ支出を2回引くことになります。抜いてしまえば、6か月とも同じ条件で並びます。
※注意点が1つあります。赤字を埋めるために使ったお金を、収入に数えないこと。取り崩し・キャッシング・持ち物の売却で入ってきたお金は収入ではありません。私は6か月でこれが約320,000円ありました。これを収入に混ぜると、黒字に見えてしまいます。
手順②:いちばん厳しかった月を見つける
ここがいちばん大事なところです。平均を使ってはいけません。
6か月の平均を取ると、そこそこ現実的に見える数字が出ます。ただし平均の月は実在しない月です。実際に来るのは、平均より良い月と、平均より悪い月だけです。平均で決めると、平均より悪い月には守れません。それはだいたい半分の月に来ます。
私の6か月でいうと、黒字だったのは2か月、赤字が4か月でした。この6つを平均すると1つの数字が出ますが、その数字どおりの月は、6回のうち一度も来ていません。平均は「起きたことの真ん中」であって、「起きた月」ではないからです。
先取りの金額は、来なかった月ではなく実際に来た月の中でいちばん厳しかった1回に合わせます。そこで出せた額なら、残りの5か月はもっと楽に出せます。逆に平均に合わせると、悪いほうの月が来るたびに崩れ、崩れるたびに「今月は無理だった」が積み上がります。
手順③:年払いの備えを先に確保する
毎月ではない支払いを全部書き出して、合計を12で割ります。この額を、貯金より先に取り分けます。①で各月から抜いておいた分を、ここで毎月分としてならして引き直すという手順です。これで、年払いが来た月も来なかった月も、同じ形で比べられます。
この17,026円を引かずに先取り額を決めていた頃は、毎月17,026円足りない状態で家計を回していたことになります。余るはずがありませんでした。
手順④:残った額を貯金の先取り額にする
いちばん厳しかった月の収支から、備えの17,026円を引いた残り。それが貯金の先取り額です。
たいていの人は、ここで出てくる金額に落胆します。目安から計算した額よりずっと小さいからです。ただしこの小さい額は、実際に出せたことが証明されている額でもあります。
しくみパパ
6か月の収支の累計が−521,370円なので、当然といえば当然です。
出てきた額がゼロだったとき
ここは正直に書きます。実績から計算すると、先取りできる額がゼロやマイナスになることがあります。
| 私の実績 | 数字 |
|---|---|
| 手取り | 360,000円(ボーナスなし) |
| 共同の財布への拠出 | 150,000円 |
| 返済(講座66,000+パソコン19,380+スマホ6,450) | 91,830円 |
| 年払いへの備え | 17,026円 |
| 6か月の収支の累計 | −521,370円 |
| 実績から出せる貯金の先取り額 | 0円 |
ここで「それでも1万円は先取りするべきだ」と決めれば、また同じところで止まります。実際、私は一度それをやって半年で止めました。
やったのは、先取りできる日を先に決めることでした。返済が1つ終わる2026年11月に合わせて、毎月10,000円で積立を再開する予定です。返済に充てていた分がそのまま浮くので、生活を何も変えずに先取りの原資ができます。
※これは私の場合の金額と時期です。おすすめの金額ではありません。収入・支出・家族構成で変わります。
ボーナスが無い家計は、月額だけで設計する
私は手取り36万円のボーナスなしです。この場合、金額の決め方が少し変わります。
| ボーナスがある家計 | ボーナスが無い家計 | |
|---|---|---|
| 年払いへの備え | ボーナスで払う組み方もできる | 月割りで積むしかない |
| 大きな出費 | ボーナスで吸収できる | 毎月の備えから出す |
| 先取り額の根拠 | 年単位でも組める | 毎月の実績だけ |
| 崩れたときの回復 | ボーナス月にまとめて戻せる | 戻す機会が無いので崩さない設計が要る |
| 設計の重心 | 年間の合計で帳尻を合わせる | 毎月同じ額で回る形にする |
差が大きいのは崩れたあとです。ボーナスがあれば、崩れた分を年2回まとめて取り返す道があります。無い場合はその機会が来ないので、そもそも崩れない額にしておく必要があります。
だから私は、金額を大きくすることより「厳しい月でも出せるか」のほうを優先しています。
金額を下げるのは失敗ではない。止まるのが失敗
最後に、いちばん伝えたいところです。
| やり方 | 1年後 | 3年後 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 月50,000円で始めて2か月で止まる | 100,000円 | 100,000円 | 止まったまま |
| 月10,000円で続ける | 120,000円 | 360,000円 | 続いている |
| 月5,000円で続ける | 60,000円 | 180,000円 | 続いている |
| 月30,000円→月10,000円に下げて続ける | 150,000円 | 390,000円 | 下げたが続いている |
※これは金額を単純に掛け算した比較で、利息や運用による増減は含んでいません。
表の1行目と2行目を比べると分かります。大きい額で止まるより、小さい額で続けたほうが、最終的に大きくなります。
だから、生活が苦しくなったときにやるべきことは「気合いで守る」ではなく「金額を下げる」です。下げれば続きます。止めると、そこで数字が固定されます。
よくある質問
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 明細が6か月分そろいません | 3か月からでも始められます。ただし年1回の支払いが映らないので、通帳を1年分ざっと見て補ってください |
| 金額が小さすぎてやる気が出ません | 金額ではなく続いた月数を数えてください。3か月続いた実績のほうが、崩れた5万円より価値があります |
| 備えと貯金は同じ口座でいいですか | 分けたほうが確実です。備えは減る前提、貯金は減らさない前提なので、同じ場所にあると区別がつかなくなります |
| ボーナスは先取り額に入れていいですか | 入れないほうが安全です。よくやってしまうのが年2回ぶんを12で割って毎月の先取り額に足すという組み方ですが、これをするとボーナスが減った年に、毎月の家計のほうが崩れます。毎月の金額は毎月入るお金だけで組み、ボーナスは出たときに別で扱うほうが安全です |
| 収入が増えたら金額も上げるべきですか | 上げてよいですが、3か月ぶんの実績が出てからにしてください。上がった直後は支出も一緒に増えていることが多いです |
| 家族と共通の財布がある場合は | 自分が出す分を固定費として先に引いてから考えます。私は月15万円を共同の口座に入れ、その残りで組んでいます |
まとめ
- 先取りするものは2つある。年払いへの「備え」と、純粋な「貯金」
- 備えを先に確保する。私は毎月17,026円で、これは貯金ではなく固定費として扱う
- 「手取りの2割」などの目安には自分の実績が1円も入っていないので、最初の金額の材料にしない
- 過去6か月の収支を月ごとに出し、いちばん厳しかった月でも出せた額を先取り額にする
- 平均は使わない。平均の月は実在しない
- ボーナスが無い家計は、崩れても取り返す機会が無いので崩れない額で組む
- 金額を下げるのは失敗ではない。止まることが失敗
この手順を踏むと、たいていは自分が思っていたより小さい金額が出ます。私の場合はゼロでした。その金額に落ち込む必要はありません。それは「出せない」という結果ではなく、「いまはここまで」という現在地が分かったということです。
現在地が分かれば、次にやることも決まります。私の場合は返済が終わる月を待つことでした。金額を大きく見せても家計は変わりませんが、現在地を正しく知ると、いつ何が変わるかが計算できるようになります。
しくみパパ
これに気づくまで、私は半年ぶん遠回りしています。